加入条件と対象者:誰が厚生年金に入るのか
厚生年金保険への加入は、個人の自由意志ではなく、法律で定められた条件に基づいて決定されます。近年では短時間労働者への適用拡大が進んでおり、以前は対象外だったパートやアルバイトの方も加入するケースが増えています。ここでは、具体的な加入要件と適用事業所の定義について詳述します。
適用事業所の要件
強制適用と任意適用
厚生年金の対象となる「適用事業所」には、法的な強制力があるものと任意のものがあります。株式会社などの法人は、従業員の人数に関わらず原則としてすべて強制適用です。個人経営の場合、常時5人以上の従業員がいる農林漁業やサービス業以外などの特定の業種が強制適用の対象となります。
適用事業所に雇用される従業員は、加入の意思にかかわらず被保険者となります。これが「強制適用」の仕組みです。一方、任意適用事業所は、事業主が日本年金機構に申請し、認可を受けることで対象に加わりますが、実例は限定的です。
適用事業所とは
厚生年金保険の適用を受け、加入手続きを行う義務のある事業所のこと。法人は全社が該当し、個人事業所は業種と従業員数で判断されます。
事業所形態別の適用関係
強制適用(全社)
株式会社、合同会社、有限会社などの法人は、従業員数に関係なくすべて強制適用の事業所となります。設立登記を行った時点で対象となります。
業種と規模で判断
常時5人以上の従業員を使用する個人事業所のうち、農林漁業、サービス業などを除く特定業種が強制適用です。それ以外は任意適用事業所として申請できます。
従業員の加入基準
フルタイム正社員と4分の3基準
フルタイムで働く正社員は、原則としてすべて加入対象です。また、週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合も、加入が義務付けられています。この「4分の3基準」は、パートタイマーやアルバイトの方が加入対象かどうかを判断する際の基本となる考え方です。
これに満たない場合でも、特定の規模以上の企業(特定適用事業所)で働く短時間労働者は、一定の賃金基準などを満たすことで加入となります。「特定適用事業所」とは、常時使用する従業員が501人以上の事業所を指し、段階的に短時間労働者への適用拡大が進められてきました。
4分の3基準は「週の所定労働時間」と「月の所定労働日数」の両方を満たす必要があります。片方だけ超えていても加入対象とはなりません。
加入判定の考え方
正社員と比較
その職場の正社員の所定労働時間と所定労働日数を基準にします。基準となる正社員が明確でない場合は、事業所の一般的な勤務条件を用います。
4分の3を判定
週の労働時間と月の労働日数がそれぞれ正社員の4分の3以上であれば、加入が義務付けられます。双方の条件を同時に満たす必要があります。
適用拡大を確認
4分の3未満でも、事業所が特定適用事業所であれば、別の要件(週20時間以上など)を満たすことで加入対象となります。詳細は次節で解説します。
70歳以上の扱い
被保険者資格の上限
厚生年金保険の被保険者資格は、原則として70歳に達するまでと定められています。70歳以降も会社に勤務し続ける場合、保険料の支払いはなくなりますが、「70歳以上の受給権者」として届け出が必要な場合があります。
これにより、在職しながら年金を受け取る際の支給停止額の計算が行われます。在職中の年金受給は、標準報酬月額に応じて一部または全部が支給停止される仕組みです。手続きの要否は就労状況によって異なります。
70歳到達で資格喪失
保険料の負担はなくなりますが、在職年金の支給調整が行われます。就労を続ける場合でも、届出を通じて年金の受け取り方を確認する必要があります。
注意
70歳到達月の翌月以降、厚生年金保険の被保険者資格を失います。高年齢雇用継続給付との関係も確認が必要です。
適用拡大の影響
法改正により、従業員数が少ない企業でも短時間労働者の社会保険加入が順次義務化されています。週20時間以上の勤務、月額8.8万円以上の賃金、学生でないことなどの要件を満たすと、健康保険とともに厚生年金への加入が必要になります。これは、将来の年金受給額を増やすとともに、医療保障を充実させることを目的としています。
適用拡大は法改正に基づく制度運用の変更であり、事業所の規模に応じて段階的に適用されます。
短時間労働者の加入要件
週20時間以上の勤務
所定労働時間が週20時間以上であることが要件の一つです。月ごとの変動がある場合は、継続的な見込みで判断されます。
月額8.8万円以上の賃金
月額賃金が8.8万円以上であることが要件です。この金額は基本給に一定の手当を加えた額で判断されます。
学生でないこと
学生身份の方は対象外です。ただし、夜間学生や定時制課程など一定の例外が設けられています。
事業所が適用拡大の対象
勤務先の事業所が適用拡大の対象であることが前提です。従業員数の基準は段階的に引き下げられています。
適用拡大は、短時間労働者が将来受け取る年金受給額を増やすこと、そして医療保障を充実させることを目的としています。加入することで老齢基礎年金に上乗せされる老齢厚生年金の対象となり、健康保険・介護保険の給付も受けられるようになります。
加入後の確認と記録の重要性
手続きは事業主が行う
厚生年金保険の加入手続きは、従業員本人ではなく事業主が行います。事業主は被保険者資格取得届を日本年金機構に提出し、受理されることで被保険者となります。加入の開始時期は、雇用された日ではなく、資格取得の事実が発生した日です。
加入の可否は事業主が判断しますが、基準に照らして不安がある場合は、事業主を通じて日本年金機構に確認することも可能です。加入漏れがあった期間の保険料は後からさかのぼって納付する必要があり、記録にも影響します。
記録の確認方法
加入後は、ご自身の年金記録を定期的に確認することが大切です。日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」には、これまでの加入期間と標準報酬月額の記録が記載されています。記録に漏れがないかを点検し、誤りがあれば早めに修正手続きをすることができます。
記録の確認方法や年金定期便の読み方については、本サイト内の専用ページで詳しく解説しています。加入条件に関する理解と併せて確認することをお勧めします。
関連ページ
加入条件に関するよくある質問
週21時間の勤務であれば、まずは正社員の所定労働時間と比較します。正社員の所定労働時間が週40時間の場合、4分の3は30時間となります。このケースでは4分の3未満ですが、事業所が特定適用事業所であれば、週20時間以上の要件を満たすため、他の要件(月額賃金8.8万円以上、学生でないことなど)も満たせば加入対象となります。
70歳に達した月の翌月以降、厚生年金保険の被保険者資格を失います。引き続き就労する場合、保険料の支払いは不要になります。ただし、「70歳以上の被用者」の届出が必要となり、在職中の年金受給にあたって支給停止額の計算が行われます。手続きの要否は就労状況により異なります。
個人経営の場合、常時5人以上の従業員を使用する特定の業種が強制適用の対象です。ただし、農林漁業やサービス業(飲食店、理美容など)は例外とされています。従業員が5人未満の個人事業所は、事業主が任意適用事業所として申請しない限り、強制適用の対象にはなりません。
加入すべきだった時期に加入手続きが行われていなかった場合、原則として2年以内であればさかのぼって資格取得の届出ができます。この場合、未納期間の保険料を後から納付する必要があります。2年を超える期間については、時効により届出ができなくなる場合があります。不安な場合は、事業主を通じて日本年金機構に確認することをお勧めします。
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このページで扱った加入条件や対象者について、さらに詳しい制度の解説を希望される場合は、お問い合わせページからご連絡ください。個別の年金相談には対応していませんが、制度の一般論としての解説は可能です。
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このページでは厚生年金保険の加入条件と対象者について解説しました。制度の全体像や保険料の算出基準について知りたい方は、以下の関連ページもあわせてご覧ください。