保険料の算出基準標準報酬月額の仕組み
厚生年金保険料は、どのようにして決まるのでしょうか。毎月の給与から天引きされる金額は、単なるパーセンテージだけでなく、「標準報酬月額」という独自の仕組みに基づいて計算されています。この算出方法と、労使折半の原則について解説します。
給与を等級に分けて
計算する仕組み
厚生年金の保険料計算を簡素化するため、実際の報酬(月給)を一定の幅で区分した「標準報酬月額」が用いられます。現在は第1級(8万8千円)から第32級(65万円)までの等級に分けられています。
日常的な言葉で言えば、毎月の給与を「給与ランク」に振り分け、そのランクに対応する金額を使って保険料を計算するルールです。実際の給与額がそのまま計算の基準になるわけではなく、ランクの幅の中に収まれば同じ標準報酬月額が適用されます。
判定の対象となるのは基本給だけではありません。残業代や通勤手当、役職手当などの諸手当を合算した金額が報酬総額として判定に用いられます。ただし、見舞金や退職金など一部の給付は対象外とされています。
※ 金額は2026年9月時点の制度に基づく参照値です。等級の幅や金額は法改正により変更される場合があります。
18.3%の保険料率が
意味すること
現在の厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。この率は、将来の給付水準を維持しつつ、現役世代の負担が過重にならないよう法改正を経て調整されてきました。
計算式は「標準報酬月額 × 18.3%」となります。たとえば標準報酬月額が30万円の方の場合、保険料の総額は月額54,900円です。ただし、ここからさらに事業主と労働者で半分ずつ負担するルールが適用されるため、給与明細に記載される控除額はこの半額になります。
18.3%という数字は、基礎年金(国民年金)の上乗せ部分としての給付財源を賄うために設定されています。この率の改定には国会の議決を要する法律改正が必要であり、頻繁に変わるものではありません。
会社と従業員が
半分ずつ負担する
厚生年金保険料の最大の特徴は、会社(事業主)が保険料の半分を負担する「労使折半」です。個人が給与明細で確認できる控除額は全体の9.15%分となります。
事業主は、従業員から預かった分と自社負担分を合わせて国に納付する義務を負っており、この仕組みが会社員の保障を支えています。
標準報酬月額は
いつ見直されるのか
標準報酬月額は一度決まればずっと同じわけではありません。毎年4月〜6月の報酬を元に9月に見直される「定時決定(算定)」と、昇給などで大幅に報酬が変わった際に行われる「随時改定(月変)」があります。この見直しのタイミングにより、手取り額に変化が生じることを理解しておく必要があります。
定時決定(算定)
毎年4月1日から6月30日までの3ヶ月間に支払われた報酬の月平均を基準に、9月に新しい標準報酬月額が決定されます。決定された等級は翌年9月までの1年間適用されます。
随時改定(月変)
昇給や降給により、固定的賃金の変動額が現在の標準報酬月額の2等級分以上に相当し、その状態が3ヶ月続いた場合に行われます。定時決定を待たずに等級が見直されます。
定時決定の基準となるのは、4月〜6月に実際に支払われた報酬の月平均です。入社直後や産休・育休中などで報酬が著しく少なかった月は、特例として除外される場合があります。随時改定は固定的賃金(基本給や固定的な手当)の変動が対象であり、一時的なボーナスや臨時手当では発動しません。
給与から控除額までの道のり
厚生年金保険料が給与明細の控除欄に表示されるまでには、複数の計算ステップを経ます。それぞれの段階で何が行われているかを順に確認しておくと、制度の全体像が見えてきます。
報酬総額の確認
基本給に残業代、通勤手当、役職手当などを合算した月額報酬を確認します。この合算額が等級判定の出発点になります。
標準報酬月額の決定
報酬総額が第1級から第32級のどの等級の幅に該当するかを判定し、その等級に対応する標準報酬月額を割り当てます。実際の給与額ではなく、等級の基準額が計算に使われます。
保険料総額の計算
標準報酬月額に18.3%を掛けて、月額の保険料総額を算出します。この金額が事業主と従業員の両方で負担する合計額です。
労使折半の適用
保険料総額を事業主と従業員で半分ずつに分けます。従業員分(9.15%)が給与から天引きされ、事業主分(9.15%)は会社が直接負担します。
給与天引きと納付
従業員の給与明細に社会保険料として控除額が記載され、事業主が両方の負担分を合わせて日本年金機構へ納付します。これが一連の流れの最終ステップです。
知っておくべき留意点
標準報酬月額の仕組みを理解した上で、実際の給与と控除額の関係を読むときに気をつけておきたいポイントを整理しました。
給与額と標準報酬月額は一致しない
標準報酬月額は等級の基準額であるため、実際の月給と完全に一致するわけではありません。等級の境界付近では、数百円の給与変動で等級が変わらないこともあります。
賞与は別の計算ルール
ボーナスなどの賞与については、標準報酬月額ではなく「標準賞与額」を使った別の計算が行われます。賞与1回あたり1,000万円を上限に保険料が算出されます。
見直しの直後に手取りが変わる
9月の定時決定後、10月の給与から新しい等級が適用されます。昇給があった場合、保険料の控除額も増えるため、手取り額の変化を事前に把握しておくことが大切です。
事業主の納付義務は厳格
従業員から預かった保険料を事業主が滞納した場合でも、従業員側の加入記録や将来の受給権には影響しません。未納が続く場合の相談窓口は日本年金機構に設けられています。
保険料の計算について
よく寄せられる質問
ボーナス(賞与)からも厚生年金保険料は引かれますか?
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引かれます。賞与にも厚生年金保険料が適用されますが、計算方法は月給とは異なります。賞与の金額から1,000円未満の端数を切り捨てた「標準賞与額」に18.3%を掛け、労使折半で9.15%ずつ負担します。ただし、1回あたりの標準賞与額には1,000万円の上限が設けられています。
保険料率は今後も変わる可能性がありますか?
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可能性はあります。18.3%という率は法律で定められており、変更には国会での法改正が必要です。過去にも、財政の状況や人口動態の変化に応じて数回にわたり改定が行われてきました。ただし、短期的に頻繁に変わるものではなく、変更があれば厚生労働省や日本年金機構から公表されます。
給与明細の控除額が毎月違うのはなぜですか?
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標準報酬月額が同じであれば、月給の変動にかかわらず控除額は一定です。ただし、残業代が大きく変動して月ごとの報酬にばらつきがある場合、随時改定の条件を満たせば等級自体が見直され、控除額が変わります。また、賞与が支給される月には賞与分の保険料が別途控除されるため、その月の天引き額は大きくなります。
自分の標準報酬月額はどこで確認できますか?
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毎年日本年金機構から送付される「年金定期便」や、ねんきんネットのWebサービスで確認できます。また、事業主にも標準報酬月額の通知義務があり、従業員から求められれば会社は該当等級を回答する義務を負っています。給与明細の社会保険料欄から、控除額を9.15%で割ることで、現在の標準報酬月額を逆算することも可能です。
保険料の仕組みを理解したら
算出基準を押さえた次のステップとして、ご自身の年金記録の確認方法や、制度がどのように変遷してきたかを知ることで、より深く制度全体を理解することができます。